めまい難聴センター
- 担当医師
- センター長:北原 糺、副センター長:西村忠己、岡安 唯、塩崎智之、阪上雅治、和田佳郎
はじめに
「めまい」は病院に来られる患者さんの最もポピュラーな訴えの一つです。その原因は多岐にわたりますので、患者さんも患者さんを紹介する診療所の医師も、どこの病院の何科に紹介すれば良いか、迷うことが多々あります。そこで奈良県立医科大学附属病院は「めまい難聴センター」を設立し、奈良県内外からめまい患者さんを一手に引き受け、耳鼻咽喉科医師の北原、和田、岡安、阪上、理学療法士の塩崎が中心となり、循環器内科、脳神経内科、脳神経外科、精神科などの周辺科と協力して診断と治療にあたっています。検査に関しては、耳鼻咽喉科専属の言語聴覚士である斎藤、浦谷、宮﨑、臨床検査技師の高田が中心となり、正確な技術で丁寧な対応を実践しています。当めまい難聴センターでは、めまいのみならず耳鳴や難聴も診療していますので、併せて紹介をお受けします。
第1話10分でわかるめまいのしくみ
第2話10分でわかるめまいの救急
第3話10分でわかるめまいの検査
第4話10分でわかるめまいの治療
めまい難聴センターの外来予約・入院予約のルール
当めまい難聴センターは完全予約制です。外来診察を希望される場合、お近くの診療所の医師に紹介状を用意していただき、奈良医大附属病院の地域連携室を通してご予約ください。さらに、めまい患者さんに短期入院検査を実施するかしないかは、当めまい難聴センターにおける外来診察の際に医師が判断します。ご理解とご協力をお願いいたします。
なお、「めまい検査」については大阪難波の入野医院、奈良天理の高井病院で、「めまい手術」については新大阪の大阪回生病院、大阪阿波座の日本生命病院、大阪堺のベルランド総合病院で、検査も手術も当めまい難聴センターと綿密に連携して行われています。お問い合わせください。
めまい難聴センター外来のめまい疾患統計
2014年5月から2018年4月までの4年間に、当めまい難聴センターを外来受診しためまい患者さんの1520例について概説します。611例(40.2%)が良性発作性頭位めまい症(疑い例含む)、522例(34.3%)がメニエール病(遅発性内リンパ水腫含む)、65例(4.3%)が前庭神経炎、53例(3.5%)がめまいを伴う突発性難聴、50例(3.3%)が他の末梢性めまい、15例(1.0%)が脳血管性めまい、32例(2.1%)が他の中枢性めまい、22例(1.4%)が他のめまい、150例(9.9%)が原因不明のめまい症の順になります。実に85%強が内耳からのめまい、生命予後に関わる危険な脳血管系めまいは1%、原因不明は10%です。
良性発作性頭位めまい症は通称BPPVと呼ばれ、どんな施設でも何科が統計をとっても第一位に輝く疾患です。当めまい難聴センターでも40.2%を占め最多めまい疾患ということになりますが、これを60歳以上の女性めまい患者さんに絞ると、第一位であるBPPVは3人に2人と、さらに高率になります。原因不明のめまい症の中に多くのBPPV予備群が含まれていることを考えると、60歳以上の女性でめまいに煩わされている患者さんがBPPVである確率は、極めて高いと言えます。
ご安心ください。めまい疾患の中で最も扱いやすいのがBPPVです。当めまい難聴センターではBPPVに対する治療アルゴリズムが確立されています。手順にしたがって患者さんを良い方向に導くことができると考えています。
原因不明のめまいに対する短期入院検査
短期入院検査の目的
診断がつかない原因不明のめまい症、あるいは診断はついたが治療に難渋する難治性めまい症に対して、めまい・耳手術外来(山中)、スポーツ平衡外来(和田)、難聴・補聴・耳手術外来(西村忠)、耳鳴・補聴外来(山下)と共同で行っている短期入院検査システムです。くり返しめまい発作を起こす病気には、良性発作性頭位めまい症、メニエール病といった内耳の病気から、脳梗塞、脳腫瘍といった脳の病気まで、様々な可能性があります。「くり返し起こるめまい発作」によって日常生活に支障を来たすほどの患者さんに対して、約1週間の入院検査を勧めています。
日数 | 内服 | 検査 | 造影MRI | 活動 | 食事 | 清潔 | 説明 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
入院日 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
蝸電図 | 適宜 | 平常通り | 平常通り (MRIは朝絶食) |
入浴できます | 看護師が入院・検査の予定について説明します。検査に関する説明用紙をお渡しします。検査に関する疑問は主治医、担当看護師に聞いてください。 |
2日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
・平衡ルーチン ・SVV ・各種アンケート |
平常通り | 平常通り | 入浴できます | ||
3日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
・カロリック ・ENG ・vHIT |
適宜 | 平常通り | 平常通り (MRIは朝絶食) |
入浴できます | |
4日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
- | 平常通り | 平常通り | 入浴できます | ||
5日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
- | 平常通り | 平常通り | 入浴できます | ||
6日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
・CT ・教授による診察(回診) |
平常通り | 日中は平常通り 消灯から絶飲食 |
入浴できます | ||
7日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
・グリセロール試験 (聴力検査、cVEMP、oVEMP) |
平常通り | 2回目の聴力検査まで絶飲食 その後は平常通り |
入浴できます | 主治医、担当医から検査結果についての説明があります。 | |
8日目 | 内服の変更は □ありません □あります 変更: |
- | - | 10時退院できます | 平常通り | - | 10時までに看護師から退院手続に関する説明があります。 |
短期入院検査のパターン
入院パターンは大きく分けて3つあります。近畿圏在住で土日に退院帰宅が可能な方は、水曜朝に入院、3泊4日で土曜朝に退院、翌週火曜午前の外来検査後に結果説明です。ご遠方からお越しの方は、水曜朝に入院、全検査終了後の翌週火曜夕に結果説明、7泊8日で水曜朝に退院です。それ以外に、当めまい難聴センターが提携している THE KASHIHARA(旧橿原ロイヤルホテル) に宿泊しながら通院検査することが可能な場合もあります。ご相談ください。
短期入院検査の内容
決して当めまい難聴センターにしかない、特別な検査を行っているのではありません。全国のめまい専門施設であれば行われているであろう諸検査を、短期入院の期間中にまとめて受けていただくというシステムです。
- 血液の流れの良し悪し、ストレス程度、耳石の不具合などを見るための血液検査
- 内耳の具合と脳の具合を診断するための純音聴力検査と語音聴力検査
- 3つの半規管(vHIT)、2つの耳石器(cVEMP、oVEMP)、上下2本あるめまい神経、それぞれの元気さを見るための神経耳科学的検査
- 重力感受性の異常を検出するための検査(SVV)
- メニエール病の特徴である内耳の水ぶくれを見るためのグリセオール試験、蝸電図検査、内耳造影MRI
- 頭蓋内や頸部に関する情報が得るための画像検査
- ストレス、精神状態を知るためのアンケート検査
短期入院検査のポイント
これらの検査を一気にこなしていただくことにより、患者さんのその時点での平衡機能の状態を一気に把握できます。さらにその結果を踏まえて、適切な治療の提案が可能になります。いろいろな医療機関を渡り歩いていると、かえって症状を長引かせたり、適切な治療時期を逸することにもなりかねません。
短期入院検査を受けてから
「短期入院検査の内容」の項で触れたように、めまいに関する諸検査を一通り行います。これにより何らかの検査異常を突き止められる確率は、2020年4月までの段階で97%を越えています。検査異常、めまい原因を突き止めた場合、めまいの治療法は大きく3つに分かれます。すなわち、投薬治療、手術治療、めまい平衡リハビリテーション治療です。いずれの治療も当めまい難聴センターで対応可能ですし、検査結果を持って患者さんの地元に戻っていただくことも可能です。
当めまい難聴センターで手術を行う場合は「4.めまいに対する手術」の項、リハビリテーションを行う場合は「5.前庭リハビリテーション」の項を参照ください。
めまいに対する手術治療
当めまい難聴センターでは、生活指導や投薬治療などの保存的治療が効かない「難治性めまい」患者さんに対して、手術適応が有るか否かを検討した上で、めまい・耳手術外来(山中)と共同で行っています。
くり返しめまい発作を起こす病気の中に良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病という内耳の病気があります。良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病も軽症であれば、比較的短期間のうちに生活指導や薬物治療で治ります。ところが中にはそのような治療に抵抗を示す難治性の患者さんがいます。効かない治療を漫然と続けていると、良性発作性頭位めまい症(BPPV)では頭を少しでも動かすと強いめまいを感じてしまうことで、メニエール病では片耳さらには両耳が聞こえにくくなることで、精神的に破綻を来してしまう場合もあります。
難治性メニエール病に対しては、内耳にたまり過ぎたリンパの水はけを良くする内リンパ嚢開放術を行っています。内リンパ嚢開放創にステロイドを局所留置することで、従来の内リンパ嚢開放術群や非手術対照群と比較して、より良好なめまい発作の完全抑制と聴力レベルの改善が期待できるようになりました。
難治性の良性発作性頭位めまい症(BPPV)に対しては、剥がれた耳石が半規管の中を浮遊しないよう、骨パテで半規管を遮断する半規管遮断術を行っています。
前庭リハビリテーション治療
当めまい難聴センターでは、生活指導や投薬治療などの保存的治療が効かない「難治性めまい」患者さんに対して、リハビリ適応が有るか否かを検討した上で、めまい・耳手術外来(山中)、スポーツ平衡外来(和田)、理学療法士の塩崎と共同で行っています。当めまい難聴センターで取り組んでいる前庭リハビリテーションの方法は、大きく2つに分かれます。
感覚強化型前庭リハビリテーション
平衡系の一部、例えば一側あるいは両側の末梢前庭機能が廃絶してしまった患者さんの、慢性期における誘発性めまいに対する治療である。患者さんが持っている残りの臓器、すなわち健常側の三半規管、視覚、体性感覚を強化することで、失った末梢前庭機能を代償するというコンセプトの治療です。野球チームに喩えるなら、9人野球のチームで1人怪我人が出たとき、他の8人をさらに鍛え上げることで優勝しようとするコンセプトです。
当めまい難聴センターの感覚強化型リハビリテーションには2系統あり、山中は伝統的な「奈良医大式前庭リハビリテーション」を進めています。内耳、視覚、体性感覚のいずれを重点的にリハビリするか、患者さんごとオーダーメイドのリハビリというコンセプトになります。それに対して、塩崎は伝統的な奈良医大式を単純かつ合理的に改良した「まほろば式前庭リハビリテーション」を行っています。視覚、体性感覚情報を取り入れつつ、状況に応じて内容をステップアップさせることができるリハビリ方式として、厚生労働省めまい平衡研究班2018で正式に採り上げられています。
図9A:まほろば式前庭リハビリテーション模式図
めまいのリハビリテーション ステップ1
A. 立位でバランスをとる練習
閉脚と継ぎ足で立っておきます。開眼閉眼で各5分1日2回。
B. 眼球を動かす練習
両手にカードを持って肘を伸ばし顔の前におきます。頭は動かさずに2つのカードを交互に見ます。左右・上下10往復1日2回。
C. 頭位変換の練習
カードを持って肘を伸ばし顔の正面におきます。カートを見たまま、頭を左右・上下に動かします。各10往復1日2回。
めまいのリハビリテーション ステップ2
A. 立位でバランスをとる練習
閉脚位で倒れない範囲で左右前後に体を動かしてください。開眼閉眼で各10往復1日2回。
B. 眼球を動かす練習
カードを持って肘を伸ばし顔の正面におきます。頭は動かさずに、ゆっくり動かしているカードを見続けます。左右・上下10往復1日2回。
C. 頭位変換の練習
カードを持って肘を伸ばし、顔の正面におきます。カードをゆっくりと左右・上下へ動かし、カードを見たまま顔をカードと同じように、左右・上下に動かします。各10往復1日2回。
めまいのリハビリテーション ステップ3
A. 立位でバランスをとる練習
座布団の上で継ぎ足で立っておきます。開眼閉眼で各5分1日2回。
B. 眼球を動かす練習
カードを持って肘を伸ばし、顔の正面におきます。頭は動かさずに早く動かしているカードを見続けます。左右・上下10往復1日2回。
C. 頭位変換の練習
カードを持って肘を伸ばし顔の正面におきます。カードをゆっくりと左右・上下へ動かし、カードを見たまま、頭をカードと反対に左右・上下に動かします。各10往復1日2回。
感覚代行型前庭リハビリテーション
一側あるいは両側の末梢前庭機能が廃絶してしまった患者さんの、慢性期における誘発性めまいに対する治療である。患者さんが持っている残りの臓器による代償がうまくいかない場合、代替機器を用いて平衡感覚入力を増加させ、平衡代償を完成させる治療です。野球チームに喩えるなら、9人野球のチームで1人怪我人が出たとき、他の8人ではプレイ続行困難なので外から選手を連れてきて優勝しようとするコンセプトです。
当めまい難聴センターでは、和田の開発した下顎振動子を用いた感覚入力支持により、動的前庭代償を補完する新規治療法を進めています。通常では、姿勢が右に傾き倒れそうになると、足底等の深部知覚によりその情報を認識し、姿勢を左に立て直します。感覚代行では、姿勢が右に倒れそうになったとき、代わりに下顎表面センサー右側に微弱振動が生じ、その情報に従い体勢を左に立て直します。これを1日に何回か時間設定して繰り返し行うことで、センサーを外した状態でも姿勢を保持できる、いわゆる持ち越し効果が期待できることがわかってきました。
臨床研究と基礎研究
超高齢社会における原因不明のめまい症撲滅運動(臨床研究)
2025年に向けて超高齢社会を迎えるにあたり、加齢性平衡障害(presby-ataxia)という分野は転倒―骨折―寝たきり―認知症という負のスパイラルの出発点となるため、健康寿命、医療経済を考える上でも解決すべき最重要課題の一つとなります。したがって健康寿命を考えるとき、まず加齢性平衡障害(presby-ataxia)への対策を考えなければなりません。
加齢性平衡障害(presby-ataxia)は加齢性末梢前庭障害と加齢性中枢前庭障害に分けられ、加齢性末梢前庭障害はさらに加齢性半規管障害と加齢性耳石器障害に分けられます。加齢性半規管障害は、年々徐々に生じる半規管有毛細胞数の減少に伴って緩徐に進行します。左右の前庭神経系の活動性の不均衡は、加齢に応じて代償性に調節されれば臨床上問題となりませんが、代償不全に陥ると誘発性の持続的浮動感によりQOLが著しく低下します。このように、加齢性半規管障害には急性という概念はなく、慢性加齢性半規管障害のみと考えられます。加齢性耳石器障害も、年々徐々に生じる耳石器有毛細胞数の減少に伴って進み、耳石器機能低下に由来する浮動感は徐々に現れます。半規管と同様、前庭代償が首尾良く進めば臨床上問題となりませんが、代償不全に陥ると誘発性の持続的浮動感によりQOLが著しく低下します。これを慢性加齢性耳石器障害と分類します。一方、高齢者は急性に生じる平衡失調で、転倒―骨折のリスクがより一層高まると考えらます。この急性平衡失調の主たる原因は、加齢性耳石器障害で耳石の易剥離性が増加し、半規管に迷入した結果生じる、良性発作性頭位めまい症(BPPV)であると推察されます。これを急性加齢性耳石器障害と分類します。剥離迷入耳石の半規管内自然消退や頭位治療による元の場所への置換により治癒しますが、頻繁に再発すればQOLが著しく低下します。
加齢性末梢前庭障害および加齢性中枢前庭障害において、それぞれの加齢による細胞障害、機能低下の治療法は存在しません。禁煙、食事指導、生活指導など、環境的要因に基づいて予防に徹するしかありません。それが叶わなかった場合、それぞれの加齢による細胞障害、機能低下を抱えたまま、内耳情報―視覚情報―深部知覚情報の相互連携を強化する前庭リハビリテーションを指導することになります。
当めまい難聴センターが原因不明のめまい症撲滅運動において、特に力を入れている対象が加齢性耳石器障害です。先述のように加齢性耳石器障害は慢性と急性に分類され、慢性は耳石器の加齢による衰えなので、当めまい難聴センターの「まほろば式前庭リハビリテーション治療」を行うということになります(図9:まほろば式前庭リハビリテーション参照)。急性は良性発作性頭位めまい症(BPPV)であると推察されますので、当めまい難聴センターの「BPPVに対する治療アルゴリズム」に則って治療を進めます(図2:良性発作性頭位めまい症治療アルゴリズム参照)。当めまい難聴センターでは超高齢社会における原因不明のめまい症の大部分が加齢性耳石器障害であると考えています。このめまい症撲滅のための「耳石に優しいめまい対策マットレス」が昭和西川(株)と共同開発されました。特許承認済です(特許第6991560号)。
誰でもできるワンタッチ・メニエール病画像診断(臨床研究)
「メニエール病」ほど、巷でいい加減な診断をされる疾患はありません。回転性めまいがあり悪心嘔吐がきついと即、頭部CT・頭部MRIを撮影して、頭蓋内に何もなければ「メニエール病」と診断してしまう医師が多いこと。そのような医師は耳鼻咽喉科医ではない場合が多いのですが。「メニエール病」は耳鳴と難聴を伴うめまい疾患で、必ず左右どちらかの内耳から起こります。いい加減に「メニエール病」と診断している医師は、その左右を決めることができません。患者さんは是非「左メニエール病」なのか「右メニエール病」なのか、その医師に罹病側を問い正してみてください。
耳鼻咽喉科領域における今世紀の最大の発見は、MRIでメニエール病が診断できるようになったことです。名古屋大学の放射線科と耳鼻科のチームが開発した方法で、ガドリニウムを静脈注射した4時間後に内耳造影MRIを撮影すると、内耳は内リンパ水腫が無ければ白く染まり、内リンパ水腫が有れば黒く抜けることを利用した診断です。
現段階では、MRI画像における内リンパ水腫の有無を見た目で診断しています。つまり、定量的ではなく定性的な診断と言えます。
めまい難聴センターの内耳造影MRI研究では、企業とタイアップして、内耳造影画像を取り込んで3D構築したのち、内リンパ腔体積を数値化することに成功しています。健常成人における内リンパ腔体積の算出もできていますので、症例数を蓄積しデータをより正確な値に近似することで、PC上ワンタッチで「メニエール病」「非メニエール病」を教えてくれるAI化を目指しているところです。この「ワンタッチ・メニエール病画像診断」の解析ソフトに関して、特許承認済です(特許第6991561号)。
ストレス・ホルモンを何とかしようメニエール病(基礎研究)
当めまい難聴センターでは、「ストレス」と「めまい」という非常に曖昧な2つの事象を、「ストレス・ホルモン」と「内耳」というより具体的な2つの事象に置き換えて、両者の因果関係を探ってきました。
メニエール病、聴神経腫瘍の手術時に内リンパ嚢組織を採取し、水チャネル分子AQP2(aquaporin-2)の発現動態、細胞内局在移動を検索しました。水チャネルAQP2はストレス・ホルモンAVP(arginine-vasopressin)の受容体であるV2R(V2 receptor)の細胞内情報伝達系によって調節されています。定量PCR法を用いてAQP2の相対的遺伝子発現量を測定し、免疫組織化学蛍光法を用いてヒト培養内リンパ嚢組織におけるAQP2陽性反応を検出し、いくつかの薬剤投与により蛍光輝度の変化を測定しました。内リンパ嚢のAQP2分子は抗利尿ホルモンの投与で管腔側から基底膜側に移動し、同様の動きがcAMP作動薬でも認められました。受容体拮抗薬、Aキナーゼ阻害薬では管腔側に留まりました。AQP2分子とエンドゾームは2重に標識されました。ストレスにより抗利尿ホルモンが産生上昇し、内リンパ嚢上皮細胞内のV2R-cyclicAMP-Aキナーゼ-AQP2から成る情報伝達系の感受性が増大すると、管腔側のAQP2が基底膜側に移動しエンドゾーム内に貯蔵され、内リンパ吸収能が低下し、内リンパ水腫の発生、メニエール病の発症をきたす可能性が示唆されました。
ストレスによってメニエール病が発症するという認識に留まると、(いつまでたっても)患者さんに「ストレスの無い、ゆったりとした生活を送るようにしなさい」という非現実的アドバイスしかできないことになります。ストレス・ホルモンと内耳の分子生物学的相互関連を明らかにすることで、(将来的には)厳しい現代社会の第一線で活躍しながら、分子標的治療、遺伝子治療によりメニエール病を根治できると考えています。
耳鳴は内耳が感じる痛みではないか(基礎研究)
耳鳴を苦痛と感じ日常生活に支障を来たす耳鳴症患者は、一般人口の1-3%と看過できない比率です。しかしながら、実際の臨床の場における耳鳴治療はおざなりな薬物治療が漫然と続けられ、発展性に乏しいのが現状です。その主たる原因の一つは、耳鳴の動物モデルが確立していないことにあります。そこで当めまい難聴センターでは、施行可能な耳鳴動物行動モデルを作成し、耳鳴発生に関与する分子マーカーの検討に注力しています。
サリチル酸耳鳴の分子マーカーとして、痛み受容体TRPV1(transient receptor potential cation channel superfamily V-1)に着目しました。サリチル酸投与によってラットの耳鳴による反応行動が引き起こされ、らせん神経節のTRPV1mRNAの発現も上昇しました。また、TRPV1拮抗剤カプサゼピン投与によってラットの反応行動が抑制され、TRPV1mRNAの発現も抑制されました。以上のことから、サリチル酸投与による耳鳴の発生機序に、TRPV1が関与している可能性が示唆されました。耳鳴は幻肢痛と類似した現象であり、内耳の感じる痛みであると考えると、痛み受容体TRPV1の耳鳴への関与は非常に興味深い所見です。
本研究により、耳鳴を動物行動学的、分子生物学的に可視化することが出来れば、「耳鳴発生の分子機構の解明」および「耳鳴の新規治療法の開発」が可能になると考えています。
奈良医大めまい難聴センターにおける
診療の流れと業績集(2024/04/01)
この項では、2016年に奈良県立医科大学附属病院に設立されためまい難聴センターのこれまでの業績(PMID)とこれからの方向性(投稿中)に簡単な一行サマリーを添えて呈示させていただきました。これまでの業績内容には、センター長である北原が2014年に奈良県立医科大学に赴任する前からしたためてきた研究内容も含めています。
まず、生命予後に関わるめまい疾患を迅速・合理的にトリアージします。残っためまい疾患の中で問題になるのはやはり、原因不明のめまい症。この多くは良性発作性頭位めまい症(BPPV)であり、今後超高齢社会のめまい症の大部分を占めることになると警鐘を鳴らしているのですが、このことが広く普及するためにはBPPVの耳石画像診断の確立が必須になります。
人は謎めいたものに惹かれます。それがメニエール病であり、現時点においても原因不明の非炎症性内リンパ水腫疾患であると定義されています。この原因を研究で明らかにしたいわけですが、来る日も来る日もめまい最多疾患であるBPPVと戦わなければならず、メニエール病と向き合う時間がない。そこで耳石に優しい睡眠頭位調節マットレスを開発し、BPPVという疾患をこの世から根こそぎ撲滅するという戦略を考えました。
こうしてできた時間を使って、謎多きメニエール病と対峙します。ストレスとメニエール病の因果関係は昔から取り沙汰されていますが、ストレスでなぜ内リンパ水腫が発生し、そこにどのような因子が加わるとメニエール病が発症するのか、という手順で着実に突き詰めていきます。そこには内耳造影MRIによる画像診断、ヒト・メニエール病の内耳組織を用いた研究が不可欠です。性格がメニエール病を引き起こすのか、メニエール病が性格を導くのか、これも解き明かすべき謎です。
めまい難聴センターの真髄は、全身の平衡システムのどこが悪いのかを短期入院検査で明らかにし、その結果をもとに前庭リハビリテーションを指導することです。このリハが患者任せでよいのか、理学療法士がどこまで介入すべきか、前庭系の障害部位によって内容を変えるべきか、などについての質の高いエビデンスを構築したいと考えています。勿論、小動物を用いた基礎研究によるサポートも重要です。さらに、感覚代行システムにより、外部からの入力でめまい平衡障害を治す未来医療にも取り組んでいます。
目次
1.漠然としためまい症状を呈するめまい患者を合理的な手順で診療する
1-1.めまい難聴センター診断
- 市中病院のめまい救急トリアージ:Ozono-Y, Acta Otolaryngol, 2014 (PMID: 24308666)
- 大学病院のめまい救急トリアージ:Umibe-A, Neurologist, 2021 (PMID: 33942786)
- 奈良医大めまいセンターの疾患統計と検査システム:阪上雅治, ER誌, 2018 (Japanese)
- 診療所で原因不明とされためまい患者は結局何だったのか:Matsuyama-S, J Laryngol Otol, 2020 (PMID: 32940200);Nishikawa-D, ANL, 2021 (PMID: 33023775);北原 糺, 耳鼻臨床, 2022 (Japanese)
- ベスティブルフレイル(Vestibular Frailty):北原 糺, Prog Med誌, 2023 (Japanese);JIAO, 2024 (PMID: 38454293)
1-2.めまい難聴センター検査
- 奈良医大めまいセンターの疾患別各種検査異常率:阪上雅治, ER誌, 2018 (Japanese)
- 疾患別のSchellong異常検出率:伊藤妙子, ENTONI, 2020 (Japanese)
- 原因不明と起立性調節障害:Matsumura-Y, ANL, 2022 (PMID: 34930632)
- 疾患別の精神心理状態:塩崎智之, ER誌, 2019 (Japanese)
- 精神心理状態と重心動揺検査:Matsumura-Y, Neurologist, 2021 (PMID: 34842571)
- 疾患別のcaloric/vHIT/ieMRI検査結果:Shugyo-M, Acta Otolaryngol, 2020 (PMID: 32437211);Ueda-K, ANL, 2023 (PMID: 36446684)
- 耳石器系新規機能検査HT-SVV:和田佳郎, 日耳鼻誌, 2016 (Japanese);塩崎智之, ER誌, 2020 (Japanese)
- 加齢とSVV異常検出率:Wada-Y, LIO, 2020 (PMID: 33134543)
- 疾患別のSVV異常検出率:Sakagami-M, ANL, 2022 (PMID: 34509307)
- 原因不明と重力感受性障害:Nishikawa-D, ANL, 2021 (PMID: 33023775)
- PPPDとSVV異常:Yagi-C, OtolNeurotol, 2021 (PMID: 34538854)
- SVV異常の分類:Wada-Y, LIO, 2023 (PMID: 36846418)
- 前庭性発作症と自宅眼振計:Tanaka-A, 投稿中 (PMID: ?????)
1-3.めまい難聴センター治療
- 奈良医大めまいセンターMAHOROBA式前庭リハ:伊藤妙子, ER誌, 2018 (Japanese)
- 前庭リハの実態と課題:北原 糺, ER誌, 2018 (Japanese)
- COVID-19によるめまいセンター診療への影響:Ueda-K, ENTJ, 2021 (PMID: 33295213)
2.もはやBPPV典型例だけを診断・治療して満足している場合ではない
2-1.検査
- 問診でどこまでBPPVがわかるか:Higashi-Shingai-K, Acta Otolaryngol, 2011 (PMID: 21905795)
- 遷延するBPPV浮遊感の予後不良因子:Kitahara-T, ANL, 2019 (PMID: 21905795)
- BPPVの内耳造影MRI部位別内リンパ腔体積の特徴:Inui-H, Acta Otolaryngol, 2022 (PMID: 35148250)
- BPPVとODとの関連性を内耳造影MRIから考察:Inui-H, Acta Otolaryngol, 2023 (PMID: 37537926)
- 側頭骨所見から原因不明のめまい症を考える:Okayasu-T, OtolNeurotol, 2018 (PMID: 30303940);AudiolNeurotol, 2023 (PMID: 36265460);耳鼻咽喉科, 2022 (Japanese)
2-2.治療
- BPPV+BPPV疑は頭部挙上就寝で治る:Horinaka-A, LIO, 2019 (PMID: 31236471)
- 誘発性浮動性めまいは頭部挙上/リハで治る:Kitahara-T, Acta Otolaryngol, 2020 (PMID: 1727566)
- BPPV遮断術と責任半規管:吉波和隆, ER, 2009 (Japanese);Horii-A, OtolNeurotol, 2010 (PMID: 20042906)
- BPPV遮断術と術後気骨導差:Uetsuka-S, ANL, 2012 (PMID: 21862256)
- BPPVに対するMAHOROBA式リハ:Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????)
- 耳石剥離に対する漢方治療・基礎研究:Harada-S, Sci Rep (PMID: 34433883);Ueda-K, 投稿中 (PMID: ?????)
- 耳石剥離に対する漢方治療・臨床研究:Okayasu-T, 投稿中 (PMID: ?????)
3.内リンパ水腫とメニエール病にMRIと基礎医学からアプローチする
3-1.検査診断と内耳造影MRI
- メニエール病の診断に関するアルゴリズム:Iwasaki-SI, ANL, 2021 (PMID: 33131962)
- 遷延するメ病浮遊感の予後不良因子:Kitahara-T, ANL, 2019 (PMID: 30072163)
- ヒト内リンパ腔の3DMRI評価:Inui-H, Acta Otolaryngol, 2016a (PMID: 27187035);2016b (PMID: 27403573);JIAO, 2021 (PMID: 35177392)
- メニエール病内リンパ腔の2DMRI評価:Ito-T, Acta Otolaryngol, 2016 (PMID: 27080254)
- メニエール病内リンパ腔の3DMRI評価:Ito-T, LIO, 2019 (PMID: 31890884)
- 3DMRIによるメニエール病診断精度:Inoue-T, Front Surg, 2021 (PMID: 34239892)
- 後半規管の水腫ヘルニア/外側半規管の水腫ヘルニア:Inui-H, Acta Otolaryngol, 2021a(PMID: 34061704)
- メ病におけるcaloric/vHITの解離:Kitano-K, ANL, 2020 (PMID: 31272843);Shugyo-M, Acta Otolaryngol, 2020 (PMID: 32437211);Ueda-K, ANL, 2023 (PMID: 36446684)
- メ病の内耳造影MRI部位別内リンパ腔体積の特徴:Inui-H, Acta Otolaryngol, 2021b(PMID: 34807797)
- メ病類縁疾患における2D/3DMRI比較:Inui-H, ANL, 2019a(PMID: 30503567);2019b(PMID: 31076273);乾 洋史, 耳鼻臨床, 2020 (Japanese);Fujita-H, ANL, 2022 (PMID: 34148725)
- 内耳造影MRI所見とストレス/ホルモン/水腫/メ病:藤田裕人, 耳鼻臨床, 2023 (Japanese);Fujita-H, ANL, 2023 (PMID: 37037749)
- 側頭骨CT所見とメ病発症側の関連性:Oya-R, ANL, 2018 (PMID: 29056463)
- 気候変動と内耳造影MRI:Sakagami-M, 投稿中 (PMID: ?????)
- 気候変動/自律神経/内耳造影MRIと水腫発生/メ病発症:Sakagami-M, 投稿中 (PMID: ?????)
3-2.治療アルゴリズムに関するテキスト
- メニエール病の治療に関するアルゴリズム:Nevoux-J, EurAnnOtol, 2018 (PMID: 29338942)
- メニエール病の保存治療に関するRCT:Kitahara-T, PLosOne, 2016 (PMID: 27362705)
- ニエール病の手術治療に関するReview:Kitahara-T, ANL, 2018 (PMID: 28760332);Front Neurol, 2021 (PMID: 34659087)
- メニエール病に対する新規TVP治療:Sakagami-M, 投稿中 (PMID: ?????)
3-3.内リンパ嚢開放術と内耳造影MRI
- 内リンパ嚢開放術の成績:Kitahara-T, AnnOtol, 2001 (PMID: 11219515);LScope, 2008 (PMID: 18520184);ANL, 2013 (PMID: 23273764)
- 内リンパ嚢開放術のコツ:Kitahara-T, ANL, 2011 (PMID: 20970268);2017 (PMID: 27004943)
- 両側メ病に対する開放術・成績:Kitahara-T, AnnOtol, 2004 (PMID: 15174769);LScope, 2014 (PMID: 24464868);OtolNeurotol, 2014 (PMID: 24979126)
- 開開放術と2DMRI:Uno-A, Acta Otolaryngol, 2013 (PMID: 23768010);Higashi-Shingai-K, ANL, 2019 (PMID: 30502065)
- 開放術と3DMRI:Ito-T, Front Neurol, 2019 (PMID: 30778329);Acta Otolaryngol, 2019 (PMID: 31274039)
- 術後再発例に対する再手術:Sakagami-M, Acta Otolaryngol, 2015 (PMID: 25762028)
- メ病に対する内リンパ嚢開放術+SVV:Shiozaki-T, JIAO, 2021 (PMID: 33893781)
- 耳科・神経耳科手術と第三の内耳窓効果:北原 糺, 耳鼻臨床, 2018 (Japanese);Ota-I, JIAO, 2021 (PMID: 33893786)
3-4.その他の治療と内耳造影MRI
- 内服治療と3DMRI:Yamashita-A, ANL, 2023 (PMID: 36858849)
- 内服方法と3DMRI:景山 魁, ER誌, 2024 (Japanese)
- 中耳加圧治療成績と3DMRI:Kitahara-T, Acta Otolaryngol, 2023 (PMID: 37067367)
- 内リンパ水腫に対するMAHOROBA式リハ:Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????)
3-5.メニエール病と精神疾患について
- メ病とその他の精神疾患合併率比較:Hio-S, Acta Otolaryngol, 2013 (PMID: 23039793);Furukawa-M, Acta Otolaryngol, 2013 (PMID: 23675809);Sakagami-M, ANL, 2016 (PMID: 23675809)
- メ病治療に精神疾患が影響するか:Yokota-Y, ANL, 2016 (PMID: 26559747)
- 内耳造影MRIによるストレス/ホルモン/水腫/メ病:藤田裕人, 耳鼻臨床, 2023 (Japanese);Fujita-H, ANL, 2023 (PMID: 37037749)
- 精神疾患と両側移行:Kitahara-T, 投稿中 (PMID: ?????)
- 基礎研究によるストレス/ホルモン/水腫/メ病:Kageyama-K, 投稿中 (PMID: ?????)
3-6.前庭型メニエール病はあるのか
- めまいのみを繰り返す疾患、水腫由来か血管由来か:北原 糺, ER誌, 2006 (Japanese)
- めまい/難聴を繰り返す疾患内訳:Fujita-H, ANL, 2022 (PMID: 34148725)
- 前庭性片頭痛の内耳造影MRI:伊藤妙子, ER誌, 2021 (Japanese)
- 前庭性片頭痛とメ病との関連性を内耳造影MRIから考察:Inui-H, 投稿中 (PMID: ?????)
- 前庭性片頭痛の抗CGRP抗体治療:Kitahara-T, 投稿中 (PMID: ?????)
3-7.内リンパ嚢組織の研究
- メ病とストレス:北原 糺, 耳鼻臨床, 2008 (Japanese);水とからだの事典, 2008 (Japanese);Kitahara-T, Front Neurol, 2021 (PMID: 34659087)
- ラット内リンパ嚢組織と水チャネル:Fukushima-M, Acta Otolaryngol, 2002 (PMID: 12403121);2004 (PMID: 15277029);Kitahara-T, NeurolRes, 2003 (PMID: 14669532)
- ヒト内リンパ嚢組織と水チャネル:Kitahara-T, JNEndocrinol, 2008 (PMID: 19094077);OtolNeurotol, 2009 (PMID: 19638944);Maekawa-C, JNEndocrinol, 2010 (PMID: 20722976);Kitahara-T, Acta Otolaryngol, 2011 (PMID: 21574774)
- 基礎研究によるストレス/ホルモン/水腫/メ病:Kageyama-K, 投稿中 (PMID: ?????)
3-8.耳鳴発生と治療の研究(痛みと耳鳴)
- 耳鳴に対する検査総論:北原 糺, 日耳鼻誌, 2014 (Japanese)
- 耳鳴に対する治療総論:山下哲範, Otol Jpn, 2023 (Japanese)
- ヒト突難後耳鳴:Hikita-Watanabe-N, Acta Otolaryngol, 2010 ( PMID: 19437168);Michiba-T, ANL, 2013 (PMID: 22840319)
- ラット耳鳴モデル:Kizawa-K, Neurosci, 2010 (PMID: 19958810);Kitano-K, Brain Sci, 2022 (PMID: 35624974)
- 耳鳴とTRPV:北原 糺, 耳鼻臨床, 2004 (Japanese);Kitahara-T, HearRes, 2005 (PMID: 15721568);Neurosci, 2005 (PMID: 16111824);Kitano-K, Brain Sci, 2022 (PMID: 35624974)
- 耳鳴に対する音響治療の臨床研究:Yokota-Y, ANL, 2020 (PMID: 32376070)
- 耳鳴・めまいに対する漢方治療:岡安 唯, 日本東洋医学, 2020 (Japanese);ANL, 2024 (PMID: 37137794);北野公一, 投稿中 (Japanese)
4.末梢前庭障害後遺症に対する前庭リハビリテーションを科学する
4-1.めまい突難SDV/前庭神経炎VNの病態
- 梢障害/神経節障害と前庭代償有利/不利:北原 糺, 日耳鼻誌, 2007 (Japanese);Kitahara-T, AnnOtol, 2005 (PMID: 16285269);投稿中 (PMID: ?????)
- VNと高齢者:北原 糺, ER誌, 2006 (Japanese);2008 (Japanese)
- VNと抗不安薬:北原 糺, ER誌, 1998 (Japanese)
- VNとステロイド:北原 糺, 日耳鼻誌, 2001 (Japanese);Kitahara-T, NeurolRes, 2003 (PMID: 12739240)
- SDV/VN後の浮動性めまいと障害部位:Shiozaki-T, Acta Otolaryngol, 2020 (PMID: 32921200)
- SDV/VN後の障害部位とリハ効果:Nakamichi-N, Acta Otolaryngol, 2024 (PMID: ?????);Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????)
- ハント後の遷延する浮動性めまい:阪上雅治, FacialNR誌, 2020 (Japanese)
- ヘモジデリン沈着による全半規管障害のvHIT所見:田中瑛久, 日耳鼻誌, 2022 (Japanese)
4-2.めまい突難SDV/前庭神経炎VNの治療
- MAHOROBA式リハの基礎データ:Shiozaki-T, Front Hum Neurosci, 2023 (PMID: 36816498)
- MAHOROBA式リハ介入時期:Shiozaki-T, Front Neurol, 2021 (PMID: 33995253)
- MAHOROBA式リハ部位別:Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????)
- MAHOROBA式リハ認知機能:Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????)
- TPAD感覚代行リハ:Shiozaki-T, 投稿中 (PMID: ?????);佐藤 豪, 耳鼻臨床, 2022 (Japanese)
- VRを用いた前庭リハの検討:Wada-Y, Acta Otolaryngol, 2016 (PMID: 27319356)
- 高容量ベタヒスチン投与の検討:Takeda-N, ANL, 2024 (PMID: 37666746)
4-3.前庭代償の基礎研究
- 静的/動的前庭代償の動物モデル:Kitahara-T, Acta Otolaryngol, 1995 (PMID: 8749173);1998 (PMID: 10095856);北原 糺, ER誌, 2000 (Japanese);Ito-T, Brain Sci, 2019 (PMID: 31752103);Matsuda-K, Acta Otolaryngol, 2019 (PMID: 30990106);松田和徳, 耳鼻臨床, 2022 (Japanese)
- 前庭代償における分子生物学:北原 糺, 日耳鼻誌, 1998 (Japanese)
- 前庭代償の健常側抑制:Kitahara-T, BrainRes, 1995 (PMID: 8624709);Neurosci, 1997 (PMID: 9015339);BrainRes, 1997 (PMID: 9310387);BrainRes, 1999 (PMID: 9878854);Acta Otolaryngol, 2000 (PMID: 11132722);Fukushima-M, Neurosci, 2001 (PMID: 11226679);Kitahara-T, Acta Otolaryngol, 2002 (PMID: 12403124);Matsuda-K, Acta Otolaryngol, 2023 (PMID: 37606190)
- 前庭代償の障害側興奮:Kitahara-T, MolBrainRes, 1998 (PMID: 9795202);Acta Otolaryngol, 1998 (PMID: 9840505);JNeurosciRes, 2006 (PMID: 16547969)
- 前庭代償と前庭神経節:Kitahara-T, NeurosciRes, 2007 (PMID: 17686539);2012 (PMID: 22178544)
- 静的代償と動的代償の治療と評価:Fukuda-J, Brain Sciences, 2021 (PMID: 33799856)
4-4.内耳再生の基礎研究
- マウス前庭有毛細胞の再生:Ouji-Y, StemCellRes, 2017 (PMID: 28689068);Sakagami-M, BiochemBiophysRep, 2019 (PMID: 31193276);Osaki-D, J Biosci Bioeng (PMID: 36503871)
5.慢性めまいを手術で治す
5-1.めまい難聴センターにおける慢性めまいのCTP陽性率
- Sakagami-M, 投稿中 (PMID: ?????)
5-2.めまい難聴センターにおける慢性めまいの手術成績
- Sakagami-M, 投稿中 (PMID: ?????)
参考文献
「ベスティブルフレイル:Vestibular Frailty」
奈良医大は医療を基礎とした街作り=Medicine Based Town(MBT)に力を入れていますが、当科はそのMBTとコラボしてベスティブルフレイル=Vestibular Frailtyというフレーズ(世界初使用)を掲げ、原因不明のめまい症の撲滅と高齢者めまいの克服に取り組んできました。
このたび、その英文総説がJ International Advanced Otology誌に掲載されました。和文著書であるProgress in Medicine誌と合わせて、お目通しいただければ幸いです。
「めまいは頭を高くして寝ると治る」
北原 糺著、マキノ出版, 2022年:どこの病院に行っても「原因不明」や「異常なし」と言われてしまう。めまいがひどくなり、仕事や家事もできず、日常生活に支障が出ている。良くなったり悪くなったりを、ずっと繰り返している。長年めまいに悩み続けているが、もう年のせいだ、と半ばあきらめている。どうか、決してあきらめないでください。めまいは、ご自身の力で良くなる可能性があるのです。めまいに悩むすべての人に、本書を捧げます。
「原因不明のめまいはもうこわくない」
北原 糺著、金原出版, 2020年:超高齢社会のめまいは原因不明に陥りやすい。しかし原因不明のままでは適切な治療を提案できません。この本を読んであなたのめまいに適切な病名をつけましょう。そうすれば治癒への道は開けます。めまい患者さんおよびめまい診療医にも役立ちます。
「聴平衡覚と健康長寿」
北原 糺編、先端医学社, 2019年:超高齢社会の聴覚、平衡機能の衰えは、身体機能や認知機能に影響し、健康長寿を脅かします。医師のみならず看護師、言語聴覚士、理学療法士など、他職種のための一冊です。
「めまいを診る」
北原 糺著、金芳堂, 2017年:医大生、研修医、めまいを専門としない耳鼻科医、めまいを復習したい耳鼻科医、めまいを勉強したい他科医向けのめまい本。めまい疾患の診断、検査、投薬治療、手術治療、めまい平衡リハビリテーション治療がこれ一冊にまとまっています。