教室史・部会史
奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室史
日耳鼻125周年記念誌より転載:平成5年以降
沿革
教室の歴史としては、太平洋戦争末期の1945年4月、奈良県立医科大学の前身である奈良県立医学専門学校設立に伴い附属病院となった。1947年に奈良県立医科大学予科が開校、1948年に奈良県立医科大学が開設され、1952年に新制大学として奈良県立医科大学医学部医学科が設置された。2004年には附属厚生女学部、附属高等看護学校、附属看護専門学校、看護短期大学部を経て、医学部に看護学科も設置されている。2007年に地方独立行政法人化、公立大学法人奈良県立医科大学となった。2014年4月に耳鼻咽喉科・前教授の細井裕司が理事長兼学長となり、医学を基礎とした特色のあるまちづくり、Medicine-Based Town構想を打ち出している。
現在は医大前に新駅設置とともに基礎医学校舎の移転が計画され、それと並行して附属病院の拡充が予定されている。
歴代教授
松永 喬(昭55.9~平10.3)
昭和55年3月、退官した山中泰輝教授の後任として、同年9月、助教授から松永 喬が4代目の教授に昇進した。同教授は、教室内の和と輪を重んじ、「夢見て汗と知恵」をもって教室員の力を結束させ、教室の広汎にわたる臨床力、研究力を高めた。1989年に第48回日本平衡神経科学会を主催し、また1995年に第96回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演会にて宿題報告「椎骨脳底動脈循環動態とめまい」を発表し、ライフワークであるめまい・平衡分野の研究を教室員とともにまとめ上げた。1989年から4年間同大学付属看護専門学校長を、1996年から2年間附属病院長を兼任し、診療体制や接遇システムの確立など病院の運営に手腕を発揮した。在籍中は日本耳鼻咽喉科学会理事(4年間)、日本平衡神経科学会運営委員長(現理事長、2年間)、日本気管食道科学会理事(2年間)、日本頭蓋顎顔面外科学会理事(5年間)等を歴任し、退任後は星ケ丘厚生年金病院長に就任した。
細井裕司(平11.1~平26.3)
平成10年3月、定年退官した松永 喬教授の後任として、翌年1月に近畿大学助教授から細井裕司が5代目の教授として着任した。前任の近畿大学耳鼻咽喉科在籍時には、ニューヨーク市立大学において聴覚の研究を行い(1994-95)、また、インドネシア国立大学において耳科手術の指導と真珠腫の研究に従事した(1996)。1999年には奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学講座の教授に就任し、同大学附属病院副院長、公立大学法人奈良県立医科大学理事、同大学住居医学寄付講座教授(兼任)を務めた。在籍中は日本耳鼻咽喉科学会代議員、日本耳科学会理事、日本聴覚医学会理事、日本小児耳鼻咽喉科学会理事等を歴任し、退任後は奈良県立医科大学理事長・学長に就任した。
北原 糺(平26.5~現在)
平成26年3月、定年退官すると同時に理事長兼学長に就任した細井裕司教授の後任として、同年5月に大阪大学准教授から北原 糺が6代目の教授として着任した。前任の大阪大学耳鼻咽喉科在籍時には、同大学解剖学教室に大学院生として基礎研究に従事し、当時台頭してきた分子生物学的手法を学んだ(1993-97)。その後、大阪労災病院耳鼻咽喉科へ医員として赴任し臨床の研鑽(1997 -2001)、ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科へ研究員として留学し基礎研究の研鑽(2002-04)、さらに大阪労災病院耳鼻咽喉科へ部長として再び赴任し、自科のマネージメントのみならず病院全体の機能向上に尽力した(2010 -12)。2013年に大阪大学准教授として帰学したのち、2014年に奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座の教授に就任し、2016年に県からの要請で同大学附属病院めまい難聴センターが新設され、センター長を兼任して現在に至る。また2016-2017年には、JICAおよびリオン社の協力の下、ベトナム国ハノイ市バックマイ病院における聴覚検査、補聴器の普及活動、奈良医大への留学生受け入れ活動に携わった。国内では日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本めまい平衡医学会をはじめとする学会代議員/評議員、国外ではSociety for Neuroscience、Barany Society、American Neuro-otology、CORLASの正会員を務める。
人事(平成5年以降)
- 病院教授
- 山中敏彰(平28.5~令4.5)、上村裕和(令5.1~)、西村忠己(令5.1~)
- 助教授・准教授
- 宮原 裕(昭61.9~平12.6),家根旦有(平12.10~平21.3),山中敏彰(平21.4~平28.4),上村裕和(平29.4~令4.12)
- 講師
- 藤田信哉(平6.4~平9.12、平11.7~平12.6),家根旦有(平8.10~平成12.9),上田隆志(平10.1~平11.6),山中敏彰(平12.10~平21.3),岡本英之(平26.7~平27.9),成尾一彦(平26.7~平28.6),太田一郎(平27.10~令3.9),上村裕和(平28.7~平29.3),西村忠己(平28.7~令4.12)、桝井貴史(令4.11~令5.2)、山下哲範(令5.7~)、岡安 唯(令5.7~)
臨床・研究
松永教授の研究テーマは、当時の奈良県の医療情勢を踏まえ、耳鼻咽喉科学全般の臨床および研究の発展に力を注いだ。教室全体の充実化が進むにつれ専門分野であるめまいの研究に傾注した。研究テーマは、「めまいの病態と治療の解明」であるが、内耳のみならず中枢が原因となるめまいに着目し、なかでもめまいと椎骨脳底動脈循環障害との関連性についてトランスレーションを重視した研究を推進した。基礎研究では形態学、電気生理学、免疫組織化学、分子生物学などさまざまな研究手法を用いて、椎骨脳底動脈障害モデル動物における末梢・中枢前庭系の形態・機能変化を調べ、臨床研究としては、耳鼻咽喉科ではあまり使用されない超音波ドップラー検査やMRA、PETなどの脳血流検査を駆使してめまい症例の脳血流動態を計測することにより多くの新知見を広げた。基礎と臨床医学の融合研究から、椎骨脳底動脈血流障害によるめまいの発症病態とその治療法を解明し、その成果を1995年の第96回日本耳鼻咽喉科学会総会にて宿題報告(前述)として発表し、その内容を著書として上梓した。
細井教授は、聴覚・めまい・頭頸部腫瘍を三本柱として教室の研究を推進した。専門分野は聴覚医学であり、超音波聴覚、軟骨伝導聴覚の研究ならびにその補聴への応用について研究を行った。超音波聴覚については、全聾の人でも骨導で音を聴くことが可能な補聴器を試作した。軟骨伝導聴覚については、外耳道閉鎖症の患者を対象とした軟骨伝導補聴器の開発・臨床実験を行い、試作器を完成した。軟骨伝導補聴器は、2017年後半に商品化される予定である。これらの研究結果について、2012年の第113回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会において「超音波と軟骨伝導による聴覚の基礎と新補聴システム」と題して宿題報告を行った。また、臨床耳科学においては中耳真珠腫の新手術法(軟素材による外耳道再建型鼓室形成術)を開発し、その臨床研究を行った。本法は、真珠腫の再発を防止する点等において大きな効果が認められ、国内の耳科手術者に広く採用されている。
北原教授の研究テーマは「めまい平衡障害克服のための臨床と基礎」である。臨床では検査の充実化により診断制度を上げ、適切な治療に導くアルゴリズムの確立を目指している。めまい疾患統計を取ると、原因不明のめまい症は低く見積もっても10-15%程度は存在する。この割合をゼロに近づけるべく、短期入院の下で網羅的にめまい検査を行う企画を2014年に立ち上げた。これにより当院めまい受診希望患者数が増え、県からの要請で附属病院めまい難聴センターが2016年に設立された。この企画により、前庭機能検査結果別に効率の良いオーダーメイド・リハビリテーション指導が可能になるよう、臨床研究を進めている。また、理学療法士を助教枠で採用する試みも、この分野の問題点の打開策として開始した。基礎研究では中枢前庭系の可塑性の分子機構を検索することで、リハビリテーション分野に基礎的エビデンスの構築を目指している。前述のオーダーメイド・リハビリテーション指導の提案には基礎的エビデンスの裏打ちは必要不可欠であり、マウスの静的動的前庭代償を記録評価するシステムを構築した。一方、メニエール病についても、難治性メニエール病に対する外科的治療、とくに内リンパ嚢ステロイド局所投与を進めるとともに、内耳造影MRIで得られた内リンパ腔を3次元構築することで内リンパ水腫を定量化し、診断および治療を円滑に進めている。留学に関しては、ハーバード大学と連携を取り、2年単位で1名が研究員として渡米している。
学会・研究会担当(平成5年以降)
- 第28回日本小児耳鼻咽喉科研究会(平成5.7)
- 第5回耳鼻咽喉科と老化の研究会(平成6.7)
- 第23回頭頸部自律神経研究会(平成17.8)
- 第1回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会(平成18.7)
- 第12回日韓耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(平成20.4)
- 第31〜34回補聴研究会(平成20.10~平成23.10)
- 第55回日本聴覚医学会総会・学術講演会(平成22.11)
- 第9回日本耳鼻咽喉科心身医学研究会(平成29.10)
- 第48回平衡機能検査技術講習会(平成30.7)
- 第1〜4回軟骨伝導聴覚研究会(平成30.7~令和4.7)
- 第34回耳鼻咽喉科情報処理研究会(平成30.7)
- 第36回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会(平成30.8)
- 第81回日本めまい平衡医学会(令和4.11)
- 第9回耳鳴・難聴研究会(令和6.7)
- 第87回耳鼻咽喉科臨床学会(令和7.6).
- 第36回日本耳科学会(令和8.10)
- 奈良医大耳鼻咽喉科畝火会新年総会・畝火研究会(毎年1月に開催)
教室刊行物(平成5年以降)
- 奈良医大耳鼻科同門会誌「畝火」第12号(平成5年)〜現在まで
- Homepage:http://www.naramed-u.ac.jp/~oto/
- Facebook:https://www.facebook.com/otolaryngologyhnsnaramed/
日本耳鼻咽喉科学会 奈良県地方部会史
日耳鼻125周年記念誌より転載:平成5年以降
沿革
奈良県地方部会の前身である日本耳鼻咽喉科奈良県支部は、昭和38年10月奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学、内海貞夫教授を支部長として発足し、ついで昭和48年8月山中泰輝教授に受け継がれたが、昭和49年5月、第75回日本耳鼻咽喉科学会総会における「地方部会」設置決議に基づき、昭和50年4月27日に奈良県地方部会と改称し、現在に至っている。
歴代会長・部会長
松永 喬
細井裕司
北原 糺
- 初代会長
- 山中泰輝(当時・奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教授)昭和50年4月就任
- 2代会長
- 松永 喬(当時・奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教授)昭和55年9月就任
- 3代会長
- 細井裕司(当時・奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教授)平成11年1月就任
- 現部会長
- 北原 糺(現・奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教授)平成26年5月就任(現在)
運営組織
奈良県地方部会規則により、奈良県内で就業または居住する日耳鼻会員をもって組織している。
部会長、副部会長が設けられ、運営、企画・調査、福祉医療、学校保健、医事問題、広報、地域医療、産業・環境保健、厚生、学術・教育・研修、救急医療、保険医療、専門医、3歳児健診、1歳6カ月健診の各種委員会で構成されている。令和6年時点で会長は北原 糺、副会長は庄司和彦である。
また、令和6年時点の日耳鼻学会代議員は、岡上雄介、北原 糺、玉木克彦、家根旦有の4名、日耳鼻参与は北村博之、細井裕司の2名である。
日耳鼻奈良県三部会開催
昭和53年より年2回、日耳鼻奈良県地方部会、奈良県医師会耳鼻咽喉科部会、奈良県耳鼻咽喉科医会という3つの組織、三部会が合同で、4月には中和地区の橿原市で奈良県耳鼻咽喉科・春講習会、10月には北和地区の奈良市で秋講習会を開催している。4月の講習会は総会を兼ねたものとなっている。春秋の講習会以外に、日耳鼻奈良県地方部会主催の共通講習および領域講習を交えた学術講演会を年間数回開催している。
また、和歌山県地方部会とともに大阪府地方部会と合同で、令和3年までは年4回、3月、6月、9月、12月、令和4年からは年3回、2月、6月、10月に日耳鼻大阪地方連合会ならびに学術集会に参加している。
会誌・刊行物(平成5年~)
- 奈良医大耳鼻科同門会誌「畝火」第12号(平成5年)~現在まで
- 奈良県耳鼻咽喉科三部会誌「耳鼻咽喉科奈良」第12号(平成5年)~現在まで
会員数(平成5年~)
年度 | 会員数 |
平成05年度 | 101 |
平成10年度 | 116 |
平成15年度 | 129 |
平成20年度 | 135 |
平成25年度 | 141 |
平成26年度 | 143 |
平成27年度 | 139 |
平成28年度 | 139 |
平成29年度 | 140 |
平成30年度 | 144 |
年度 | 会員数 |
令和01年度 | 149 |
令和02年度 | 146 |
令和03年度 | 143 |
令和04年度 | 146 |
令和05年度 | 143 |
写真
20240120同窓会新年会(鴻信義慈恵会医科大学教授・特別講演)
20230121同窓会新年会(吉川衛東邦大学大橋病院教授・特別講演)
20220129同窓会新年会(東田有智近畿大学医学部附属病院病院長・特別講演)
20210109同窓会新年会(太田伸男東北医科薬科大学教授・特別講演)
20200111同窓会新年会(宇佐美真一信州大学教授・特別講演)
20190105同窓会新年会&細井裕司理事長・学長再選祝賀会(山岨達也東京大学教授・特別講演)
20180120同窓会新年会&上村裕和外科マスター就任祝賀会(山田武千代秋田大学教授・特別講演)
20170805山中敏彰病院教授就任祝賀会
20170121同窓会新年会&奈良医大めまい難聴センター設立記念祝賀会(鈴木衞めまい平衡医学会理事長・特別講演)
20160109同窓会新年会&奈良医大開講70周年記念祝賀会(細井裕司奈良医大学長・特別講演)
20150124同窓会新年会&細井裕司学長就任祝賀会(氷見徹夫札幌医大教授・特別講演)
20140927北原糺教授就任祝賀会