集学的治療を支える高い手術力
- 技術の提供と継承
外科マスター 挨拶
奈良県立医科大学において優れた外科手術手技を持つ医師に対して外科マスターの称号を与える制度が2017年から置かれるようになりました。その初代・外科マスターを耳鼻咽喉・頭頸部外科から選出して称号を授与して頂きました。
国家資格のようなものではありませんが、手術手技に秀でた人材に対してこのような称号を与える制度は国内ではこれまでにない試みです。大学病院に技術的に優れた人材を確保するために、また高い技術を維持していくためにも画期的なものであると理解しています。
患者様に対しては精度の高い安心できる手術治療を提供できる指標として捉えて頂けるであろうと考えています。近年は化学療法剤、分子標的薬、そして放射線治療が様々な診療科で重要な役割を果たしています。頭頸部癌治療ガイドラインでも手術と並んで重要な標準治療の選択肢の一つとなっています。しかし、現在でも手術治療以外の治療によって頭頸部癌の再発がないわけではありません。局所や頸部での制御が困難であった場合に、しっかりとした手術治療を提供できる技術力があるからこそ行える治療であるとも言えるのです。また、手術治療の方が機能的かつ根治的に優れている場合もあるのです。
医学生、研修医諸氏には目標として研修に臨んで頂けるのではないでしょうか。悪性腫瘍の治療においては一人の外科医師だけが手術をし続けているような環境では、診療科としていずれ破綻してしまうことが懸念されます。結果的に不利益を被るのは患者様ということになってしまいます。我々、頭頸部外科グループとしては頭頸部癌診療を専門とする全ての医師が高い手術技術を提供できる水準に達して欲しいと願っています。高い志を持つ頭頸部外科医を育てるためにグループを率いていくことに外科マスターが意義あるものとなることを信じます。将来、皆さんの中から外科マスターの称号を持つ方々が多く輩出されることを望んでいます。おそらく県民の方々も期待しているのではないでしょうか。
奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学
病院教授 上村 裕和